白の姫に差し伸べられた、光と闇の手





「氷霞ちゃん……」




トン、と軽い足音がする。

私は涙を流しながら、いつもとは違う、バラの氷像を作った。


大好きだよ。

愛してるよ。


そんな気持ちを伝えるように。



しかし、そうして獅紋くんを悼む間もなく、部屋の外からガチャッ、バタバタッと忙しない音がして、ハッと気持ちを切り替えた。




「誰か来た!? 氷霞ちゃん、早く逃げよう!」


「うん!」




素早く獅紋くんの下から抜け出して、そっと獅紋くんの体を横たえる。

バラの氷像をその近くに置くと、手を差し伸べている翠笑のもとに駆け寄って、その手を取りながら一緒に窓の外へ身を投げた。


それと同時に、バンッと獅紋くんの部屋の扉が開き、誰かがなだれ込んでくる。




「窓だっ、逃がすな!」