2人を、苦しめたくない。
私が願うことは、ただそれだけだ。
そして、それを叶える残酷な方法が頭に浮かんだ。
涙が一筋流れる。
私はこれから、更なる闇に身を堕とすだろう。
「獅紋くん……」
「……李璃」
「ダメだっ、氷霞ちゃん!」
獅紋くんの服を掴むと、獅紋くんはホッとしたように微笑んで、喜色が滲む声で私を呼んだ。
その後ろから、翠笑の焦った声が聞こえて胸が痛む。
「昔みたいに、温かい世界で、獅紋くんと一緒に生きたい。生まれる前から結ばれる運命だった、私だけの王子様……」
「あぁ……一緒に生きよう、李璃。どんなことがあっても守るよ。1人にしない」
獅紋くんは振り返って私の手を取り、甲に口付けをした。
愛情いっぱいの瞳で私を見つめて、翠笑に向き直ろうとする獅紋くんを、胸に飛び込んで止める。



