頬に添えた手の親指で唇をなぞられて、次にキスされる場所が分かった。
「それに、李璃は千化に洗脳されていたんだろう? そうじゃなければ、おじさまとおばさまを殺した奴のもとで、同じ殺し屋になるとは思えない。李璃は人殺しなんてできる子じゃないんだ」
「ぁ……」
分不相応な高みから、一気に地獄に落とされたような気分だ。
獅紋くんに受け入れてもらうなんて、やっぱり叶わぬ願い。
私は泣きそうになりながら、獅紋くんの手をそっと離した。
「私、獅紋くんが思ってるようないい子じゃないよ……初めて人を殺した時は、任務じゃなかったんだ」
「……何?」
驚いた顔の獅紋くんを見て、1歩、後ろに下がる。
「8歳の時、私がいるって気付かずに、家に空き巣が入って来たことがあるの……家を漁るあの人が怖くて、私……後ろから忍び寄って、ナイフで首を切った」