練り上げた魔力をゆっくりと全身に戻して、距離を取るクラスメイトとは反対に、こちらに来る男子を見た。
赤茶髪に金色の瞳。
髪の色も目の色も違うけど、あの嘘くさい笑顔は確かに翠笑だ。
「ごめんね? いつもはこうじゃないんだけど。美人だからって変な口説き方しちゃダメだよ、獅紋?」
「そういうのじゃない」
「あれあれ〜? それじゃあ“どういうの”で偽名か、なんて聞いたのかな?」
溜息混じりに否定した來樺院獅紋に、翠笑は踏み込んだ質問をする。
翠笑のおかげで冷静さは取り戻したけど、そんな率直に聞いて、何か面倒なことを言われはしないか。
そんな不安とは裏腹に、來樺院獅紋は言葉に詰まって、首の後ろに手を回した。
「すまない、確かに失礼だった。俺はただ――」
「――白蓬李璃か、って聞きたかったんだろ?」
「……芹羽か」



