震える手で、暗器を……精神状態に左右される魔力操作が必要無い、確実に命を奪える武器を持って、ゆっくり振り上げる。
「はっ……、はっ……!」
後は心臓に目掛けて振り下ろすだけ。
たったそれだけのことなのに、震えたまま手が動かなくて、喉がカラカラになった。
殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ。
今までだって沢山殺してきたんだ。
今更、大切な人だから殺せないなんて、言っていいわけがない。
暗器を握る両手に力を込めて、私はぎゅっと目を瞑った。
次に目を開けた時、この手を振り下ろすと覚悟して。
しかし、カッと目を開いたその瞬間、獅紋くんの枕元から音楽が流れ出した。
「ん……」
「っ!」
この音は、着信音だ。
電話が掛かってきたんだ。
頭では予想外の事態を理解できたのに、私の体は硬直して、動かなくなった。



