白の姫に差し伸べられた、光と闇の手

Side:白蓬(はくほう)李璃(りり)(氷霞)


心臓が痛いくらいに拍動して、どくん、どくんと鼓動が聞こえる。


目の前には、少し寝苦しそうに眉根を寄せている獅紋(しもん)くんがいて。

殺さなきゃ、と思えば思う程、呼吸が浅くなった。




「は……っ、は……っ」




殺せない。

殺したくない。


でも、私が逃げたら、ボスが残酷な方法で獅紋くんを殺してしまう。



獅紋くんに命の危機を伝えて、(うしお)捜査官のもとに一緒に逃げれば、翠笑(すいしょう)が殺されてしまう。

そして、その後は獅紋くんも……最悪の場合は潮捜査官まで殺されてしまうかもしれない。


獅紋くんの命の対価が私の命なら、すぐにでも払っていた。

けれどボスは、そんなに優しい道を用意してくれていない。



どう足掻いても獅紋くんが死ぬ運命なら、私が苦しませずに殺さなきゃ。