白の姫に差し伸べられた、光と闇の手

Side:翠笑(すいしょう)


扉を1枚隔てた向こう側。

そこには、真実を知ってしまった氷霞ちゃんと、残酷なボスがいる。


優しい氷霞ちゃんが、獅紋を殺せるわけないのに……。

どうしてボスは、氷霞ちゃんに酷なことをさせるんだろう。




「翠笑」


「あ、ボス……」




しばらく待っていると、ボスが扉を開けてこっちに来た。

でも、開けた扉を後ろ手に閉めてしまって、氷霞ちゃんから隔離される。


ボスは僕に優雅な微笑みを向けて、端的に口を開いた。




「翠笑、氷霞の代わりに來樺院獅紋を殺そうとしてはダメよ。氷霞自身の手で殺させなさい」


「でも……氷霞ちゃんには、無理だよ」


「來樺院獅紋を殺せないなら、処分するだけよ」


「!」




人間的な感情が希薄な人だとは知っていた。

それでも、氷霞ちゃんを殺す気があるなんて思っていなかったから、驚いてしまう。