「い、や……私には、殺せない……殺したくないっ!」
震えながら、ボスの言葉に初めて逆らった。
潮捜査官が言っていた通りだ。
ボスは……殺し屋千化は、極悪人。
「そう。……翠笑、隣の部屋に行っていなさい」
「え、でも……」
「女同士、秘密の話があるの。分かるわよね?」
「……分か、った」
ボスの穏やかな声に促されて、翠笑の気配が遠ざかる。
パタン、と扉の閉まる音がすると、ボスは穏やかな声のまま、私に語りかけた。
「氷霞。どうしても來樺院獅紋を殺すのが嫌なら、殺さなくてもいいわ」
「……ぇ……?」
「わたしが代わりに殺してあげる。氷霞はわたしに洗脳されて、無理やり人殺しをさせられてたんだって説明もしてあげないとね」
「っ、だ、め、獅紋くんを殺さないでっ!」



