今まで、どこかで考えないようにしていた思いが一気に溢れて、絶望と怒りが同時に襲ってくる。
「わたしが憎いのかしら? 愛しているわ、氷霞。わたしの可愛い娘」
私の前にしゃがみ込んだボスが、温かい手で私の頬に触れた。
もうそんな言葉、信じられるわけがないのに……私の脳は甘く痺れて、喜びに震えてしまう。
ボスが憎い。
ボスが好き。
正反対の気持ちを処理できず、涙が流れた。
「ふふ……苦しいのね。でも、本当の試験はここからよ」
「し、けん……?」
「えぇ。予定は少し狂ったけれど……条件は整っているもの。氷霞、3日後に來樺院獅紋を暗殺しなさい」
「っ……!」
ボスから改めて宣告されて、心臓がどくん、どくんと大きな音を立てる。
魔導警察に捕まって正体がバレたのだから、任務失敗で手を引くことをどこかで期待していた。



