來樺院獅紋もまた、私の反応を見落とすまいとするように、真剣な目で見つめてくる。
「6歳まで、どこにいた?」
具体的に出された数字が、よりによって何故6なのか。
触れられたくないところを無遠慮に触られたようで、不快感が湧き上がる。
「あなたに言う必要、ある?」
「じゃあ質問を変える。黒塚瑠璃という名前は、偽名か?」
どくん、と心臓の音が聞こえた。
どうして偽名だと気付かれた?
確信を持って言っている?
任務失敗。
殺し屋だと言い触らされる前に、殺してしまうか――……。
反射のように吹雪を起こそうとした瞬間、「ちょっとちょっと」と聞き慣れた声が耳に入った。
「いきなり何言ってんの。初対面で偽名か? なんて失礼でしょ。獅紋らしくないよ?」
「夜唄……」
來樺院獅紋の視線が私から外れて、張り詰めた緊張の糸が緩む。



