目の前が真っ暗になったかと思えば、次の瞬間には、家の中にいた。

あんなに重かった体も軽くなって、お兄様はどこに、と辺りを見回す。




「え、あれ、どこ、ここ」


「こういった時の為の隠れ家よ。前に教えたことがあるでしょう?」


「ボス……?」




どこを見ても、生活感のある家の中だ、ということしか分からない。

私は頭上から聞こえた声に顔を上げて、白いドレスに身を包んでいる女性を見た。




「えぇ。お帰りなさい、氷霞(ひょうか)




おっとりした風貌のボスは、柔らかく微笑んで私の頭を撫でる。

それが嬉しくて、帰って来れたことにホッとして……でも、この人が私のお父様とお母様を殺したんだ、と体の芯が冷たくなった。




「はぁ~、よかったぁ……もうほんと心臓止まるかと思ったし、本当に本当に助けられてよかった……!」


翠笑(すいしょう)……」