「逃げて、翠笑!」


「僕が氷霞ちゃんを見捨てるわけないでしょ!」


「死にたいの!? いいから行って、お願い!」


「君も殺し屋? 氷菊(ひょうぎく)と一緒にいるってことは、風音(ふうおん)かな。まぁ、まとめて捕まえてあげるよ」




体の自由が利かないから口で説得するしか無くて、その間もお兄様の声は近くなって。

せめて翠笑だけでも逃がさなきゃ、と青ざめて必死に頭を働かせると、頭上から柔らかい女性の声が聞こえた。




「手の掛かる子供達ね」


「っ、お前、千化!!」




お兄様が鬼のような形相で私の前を睨み、怒鳴る。


あんな感情的な姿、初めて見た。

そう思った直後、目の前が真っ暗になって、ふっと体が軽くなった。