「状態は?」
「魔力操作を阻害する腕輪をつけられてる。でも……」
独房を出ながら、私は練習の成果を発揮し、得意の融解魔法で邪魔な腕輪を溶かす。
どろっと液状になった腕輪が床に落ちると、魔力操作を乱されるあの不快な感覚が無くなり、スッキリした。
「わお。やっぱり氷霞ちゃんって天才……じゃなくて、早く出よう。ボスが表で陽動してるけど、いつこっちに来るか分からないし」
「! ボスが……」
複雑な感情が湧き上がり、体が固まる。
けれど、翠笑に背中を押されて我に返った。
今は、とにかく脱出優先。
ボスとどんな顔をして会えばいいかなんて、後で考えればいい。
翠笑と歩き出そうとして、私は蠱惑がいる独房を見た。
蠱惑は何も言わず、微笑んで私に手を振る。



