魔導警察官じゃない。
その驚きを味わった後に、フードの人物がこちらに顔を向けて、仮面を付けていることに気付いた。
穴が空いた部分から、紫色の目と視線が合って、更に驚く。
「見つけた。助けに来たよ、氷霞ちゃん。一緒に帰ろう」
「翠笑……!」
仮面越しでくぐもった声は、魔法で変えられたものなのだろう、聞き覚えのない声だった。
それでも、私の独房に近付いてくる様子と、フードから覗く赤い髪、紫の瞳は任務で見慣れた翠笑の姿と同じだ。
「あら、李璃ちゃんのお迎え? 他にも王子様がいるなんて、隅に置けないわねぇ」
「……」
翠笑はチラッと隣の独房を見て、ポケットから鍵束を取り出し、私の独房の鍵を開ける。
すんなりと開いた扉から手を差し伸べられて、私はホッとしながらその手を取った。



