独房で蠱惑と話をするのも、当たり前になった。
心の内を話せる人がいるから、私はお兄様を前にしても、まだ口を閉ざしていられるのかもしれない。
しばらく魔力操作に集中していると、留置所の外の方が何だか騒がしいことに気付いた。
それは隣の蠱惑も同じようで、「あら? 何だか向こうの方、賑やかじゃない?」と声を上げる。
魔導警察署内で何かあったのか。
そんな風に意識を向けると、ガチャ、と扉を開けて、留置所区域の方に誰かが入ってきた。
「……」
その誰かは無言で、こちらの方に歩いてきているようだ。
早歩きのような、少し速いペースの足音を聞きながらじっとしていると、檻の前にキョロキョロとしながら歩く、フードを被った人物が見えた。



