白の姫に差し伸べられた、光と闇の手



見えるわけでもないのに、どういうことだろうと隣の壁を見る。


蠱惑は心なしか沈んだ声で言った。




「あたしね、妹がいるの。それはもう、あたしに似て美人で、性格も可愛くて、数々の男を虜にしていたわ」


「……そう」


「ふふっ、引いてる? 本当のことなのよ。あまりにも可愛くて男を虜にしすぎちゃったから、無理やり体を暴かれて、自殺したの」


「……!」




人の死が身近だから、自殺という言葉の意味を、実感を伴って理解できる。

何て言葉をかけたらいいのか分からなくて、「それは……」と続かない言葉を口にした。


けれど、蠱惑は明るい声で答える。




「大丈夫よ。もう何年も前のことだし。妹を自殺に追い込んだ男達は、あたしがこの手で殺してやったわ」


「そう……」