「……覚えてなかったの。自分のこと。私を拾ってくれた人に恩返しがしたくて……殺し屋になった」
「ふぅん……まぁ、事情は人それぞれよね」
あっさりと受け入れた蠱惑に、どこかホッとする。
恩返しで殺し屋になったことを、責められなかったからだろうか。
許されることじゃないのは、事実なのに。
もやっとするものを抱えながら、私も疑問に思っていたことを尋ねた。
「蠱惑は、どうして私のことを魔導警察に言わなかったの?」
「う~ん、そうねぇ……力づくで負けたわけだし、殺し屋っていうのは本来、お互いノータッチでしょう?」
「……私を、恨んでないの?」
「思うところはあるわよ。結果的に捕まっちゃったし。でもねぇ……やっぱり、あなたの目、かしら」
「目?」



