あの時は入月織江になりすましていたからか、記憶にある顔とは少し違うけど……唇に指を当てて妖艶に笑う様はあの時と同じだ。
「あの時はどうも。おかげさまでこんな場所が宿になっちゃったわ」
「……ごめんなさい」
「あらやだ、そう素直に謝られたら恨みがいがないじゃない」
うふふと笑いながら言われて答えに困ると、潮捜査官に背中を押されて独房の中に入れられる。
狭い部屋の中で振り返って潮捜査官を見ると、檻越しに冷たく笑いかけられた。
「李璃。魔導警察に捕まった以上、檻の中から出ることはできない。明日の取り調べまで、よく考えておくことだ。本当に、千化は庇うに値する人間か」
「……」



