根本を立ち上げた前髪は、それでも目にかかる長さがあるようだ。
さらっとした金髪から覗く緑の瞳は、私と視線が合うと、驚いたように見開かれた。
パク、と口が開く。
「りり」と、そう動いたように見えたけれど。
不自然に思われないよう、私はターゲットから目を逸らして、5列4行に並ぶ机の更に後ろに、ぽつんと付け足された空席へ向かう。
わざわざ後ろを向いてまで、ターゲットは席に座る私を見つめ続けた。
「氷霞なら、顔で釣れる」とボスは言っていたけど、こんなに食いつきがいいとは。
「それでは、皆さん黒塚さんとお話したいでしょうから、ホームルームは早めに終わります。大勢で囲んで困らせないようにね」
連絡事項を告げた担任は、そう言って教室を出て行く。
途端に、ガタガタッと席を立つ音が聞こえて、私の周りに沢山の人が集まった。



