「それでは、自己紹介をお願いします」
チョークを置いた担任の言葉で、ターゲットから視線を外して口を開く。
「黒塚瑠璃です。得意な属性は火と風。趣味は手品を見ることと、彫刻を鑑賞すること。嫌いな食べ物は人参です。どうぞよろしく」
名前と属性だけで済ませようとしていた自己紹介は、翠笑が口を挟んできたことで、こんな内容になった。
百歩譲って趣味は分かるとしても、嫌いな食べ物なんて本当に言う必要があるのかどうか。
翠笑曰く、「氷霞ちゃんは綺麗すぎて近寄り難いから、可愛いところ見せて親近感を持たせないと」だそうだ。
「ありがとうございます。黒塚さんの席は……」
担任の声を聞きながら、ターゲットがこちらを見たのに気付いて視線を向ける。



