翠笑は私の要望通り、この場は何もしないでいてくれたから、彼に飛び火することはないだろう。
「待ってくれ、李璃! こんなの身に覚えがない疑いだと言ってくれ!」
「……」
必死な顔をする獅紋くんを見て、何も言わず、表情を変えずに目を逸らした。
魔導警察がどこまで掴んでいるか……獅紋くんが何を知っているか分からないけど、大罪を犯した私に言えることは無い。
「瑠璃さま……っ」
「……」
教室を出る間際、聞こえた胡桃の声に視線を向けると、悲痛な顔で見つめられた。
もしかしたら、胡桃とはもう二度と会うことはないかもしれない。
私の初めての友達。
何回も笑いかけてくれて、色んなことを話して、心配もしてくれた。
今までありがとう、とお礼を伝えるつもりで、私は胡桃に微笑みを返し、教室を出た。