獅紋くんが言葉を探すように視線を落として、口を開いたり、閉じたりしている間に、チャイムが鳴った。
結局、獅紋くんが何を言おうとしていたのか分からないまま……そして、“元”婚約者としてまともに話ができないまま授業が始まる。
先生の声を聞き流しながら、考えるのは任務のこと。
獅紋くんと恋仲になるのは、難しくない。
というより、記憶を思い出した今、もう恋仲になっているも同然だ。
だけど、そこから先はできない。
獅紋くんは、私にとっての光。
殺せないし、他の誰かに殺されて欲しくもない。
やっぱり、何とか殺さずに済むよう、ボスに相談してみようか……。



