緊張している、のだろうか。


私は今まで殺し屋として生きてきた。

“普通”に紛れる殺し屋、をモットーとする翠笑(すいしょう)とは違い、私は同じ年頃の人達と過ごしたことが無い。


ターゲットの気を引けるか。

生徒に紛れることができるか。


考えれば考えるほど、失敗がちらつく。




黒塚(くろづか)さん、入ってください」


「……」




深呼吸をして、カラカラと扉を開ける。

教卓の横まで真っ直ぐ歩き、等間隔で並ぶ21台の机に体を向けた。


カッカッと担任が黒板に私の名前を書く間、ざっとクラスメイトの顔を見る。


桜色の髪に桜色の目をした類家(るいけ)胡桃(くるみ)

いつもと色が違うけど、見慣れた笑顔を浮かべている男子。

それから、窓際の席で頬杖をついて外を眺めている、金髪緑目のターゲット。