その後は、自分を孤児だと思いながらボスに貰った家で暮らし、ボスに恩返しをする為に殺し屋となった。
「もう、お加減はよろしいのですか? 瑠璃さま」
「うん……心配かけて、ごめんね。もう大丈夫」
寮を出て、教室に向かいながら、心配の表情を浮かべる胡桃に微笑む。
胡桃は驚いたような顔で、「まあ」と口を押さえた。
「何だか、柔らかくなられましたね」
「そう、かな。昔の記憶を思い出したからかも」
一昨日までと比べて、世界の見え方が変わった感覚はある。
押し殺すようにしていた感情も、発露しやすくなったし……身近なところでは、翠笑に向ける感情がどんなものかも、自覚した。
それはきっと、幼い頃の経験を思い出したからだ。