Side:白蓬(はくほう)李璃(りり)(氷霞)


無我夢中で走って、寮に戻った。

自室にこもると、床に座り込んで、ベッドに顔を埋める。



わたしは、白蓬(はくほう)李璃(りり)

お父様やお母様、使用人達に愛されて育ち、将来必ず結ばれる“おうじさま”……獅紋(しもん)くんがいた。


私は、氷霞(ひょうか)

親に捨てられて、ひとりぼっちだったところをボスに拾われ、殺し屋として育てられた。



どちらもワタシで、どちらもワタシじゃない。




「氷霞ちゃん……」




窓の方から聞き慣れた声がして、混濁した意識の中から、“私”が浮上した。




「すい、しょう……」


「……思い出したの?」




問われて、ベッドに顔を埋めたまま、ただ会話だけを聞いていた翠笑に説明する。