「あれ、バレちゃってたか。ん~、でもさ、所詮ぽっと出の婚約者だよね? そんなのより、僕の方が瑠璃ちゃんを分かってあげられると思うなぁ」


「ぽっと出じゃない。ずっと前から決まっていたことだ。李璃も、昔のことを思い出した」


「忘れる程度の思い出でしょ? 瑠璃ちゃんがどうして逃げたのかも分からないくせに。獅紋じゃ無理だよ。瑠璃ちゃんを支えてきたのは僕だ!」




赤茶髪の少年は笑顔を歪めて、金髪の少年に背を向ける。




「心配しなくていいよ、瑠璃ちゃんは僕がちゃんと慰めてあげるから。獅紋は追ってこないでね。また泣いて逃げちゃうかもしれないし」


「夜唄!」


「まぁ、そもそも見つけられないかな」




赤茶髪の少年は笑い声を上げて、少女の後を追った。

金髪の少年もすぐに後を追おうとして、しかし俯く。


硬く硬く握られた拳は、ブルブルと震えていた。