白の姫に差し伸べられた、光と闇の手

Side:―――


走り出した少女を追いかけて、金髪の少年は中庭を出た。

どうして少女が逃げたのか、分からないまま。


しかし、少年の行く手を塞ぐように、1本の腕が横から伸びる。




「っ、夜唄!?」


「ダメだよ、獅紋。瑠璃ちゃんは僕に任せて」


「なっ……!?」




現れたのは、嘘くさい笑みを顔に貼り付かせた赤茶髪の少年。

金髪の少年は思わず足を止め、少女を気にしながらも、赤茶髪の少年を鋭く見据えた。




「黒塚は俺の婚約者、白蓬李璃だ」


「そうなんだ。でもさ、瑠璃ちゃん泣かせたの、獅紋だよね?」


「それは……っ」


「やっぱり、獅紋に追う資格、無いと思うな」




赤茶髪の少年は笑顔の裏に冷酷さを秘め、金髪の少年に鋭い言葉を浴びせる。

金髪の少年はくっと顔を歪めて、それでもと、赤茶髪の少年を見つめ返した。




「夜唄が黒塚に好意を持っているのは分かっている。だけど、李璃は俺の婚約者だ。李璃の後は、俺が追う」