『振り返っちゃダメだよ。獅紋に惑わされちゃダメ』
翠笑の温もりが蘇る。
『僕が何回でも慰めてあげる。だから、任務の時は何も考えないで』
優しい声に、心拍数が下がっていって。
『殺すのが怖いか? それなら、魔法の言葉を教えてやろう。ターゲットは、“人に死を望まれるような存在”なんだ』
まだ殺し屋になって間もなかった頃、ボスが囁いた言葉を思い出す。
『いい子だな。……愛してる、氷霞』
とっておきのご褒美として、数回だけもらえた愛の言葉。
今でも、思い出すだけで脳が甘く痺れて、体の底から力が湧いてくる。
「……ショット」
わざと声に出して、氷の弾を撃った。
レンズ越しに、こめかみに穴が空くのがハッキリ見える。
……帰ろう。
感情を無にして、目を瞑りながら後ろを向いた。