あの時、目を覚ますより前は……どこで、何をしていたんだっけ。



自然と左の指が動く。

考えて、考えて、思い出そうとしてみたけど……昔の名前と同じく、何も思い出せなかった。




「覚えて、ない……気付いたら、お父さんの家で……」


「……! そう、か……」




獅紋は何かを押さえ込むように俯いて、拳を硬く握る。




「黒塚は……この学園で、俺と初めて会ったよな?」


「え……うん。教室で会ったのが、初めて」


「分かった……ちゃんと確信が持てたら、話したいことがある」




顔を上げて、私を見た緑の瞳は……何故だか、熱を孕んでいる気がして。

恐れと不安を抱きながら、こくりと、頷いて答えた。