「分かりました。よく覚えておきますね」
「うん」
類家胡桃はふわりと蕾が開くように笑って、心なしか肩の力が抜けた様子で、私を高等部校舎の職員室まで案内した。
「ここが職員室です。……失礼します、4年Sクラスの類家胡桃です。辻野先生はいらっしゃいますか?」
私に紹介した後、類家胡桃は職員室の扉をノックして、中に呼び掛ける。
少しして現れたのは、30代と思しきスーツ姿の女性だ。
「おはようございます、どうかしましたか?」
「おはようございます。転校生の黒塚さんをお連れしました」
「……黒塚瑠璃です」
紹介に合わせて名乗ると、女性はニコリと微笑む。
「初めまして。私は4年Sクラスの担任を務める辻野千秋です。……ありがとう、類家さん。先に教室へ行っていいですよ」
「はい。それでは失礼致します」



