「あ……これは、その……」
咄嗟に左手を背中に隠して、顔を背ける。
考える時に左手の人差し指と親指を擦る癖は、特徴的だからボスに直すよう言われていたものだ。
今はすっかり矯正できたと思っていたのだけど、深く考え込んで無意識にやってしまったらしい。
「黒塚。誰に教わったんだ?」
獅紋は地面に左手をついて、私の方に身を乗り出す。
真剣で、必死さが滲む顔に、嘘を吐いてはいけない気がした。
「え、と……別に、教わったわけじゃ……」
「どうして隠した?」
「それは……親に、直すよう言われてたから……」
獅紋はどうしてこんなに食いついてくるのだろう。
ただの変わった癖なのに。



