押し殺すような声に、人間らしさを見た気がする。
獅紋の潔白の正義は、そこから来ているのかもしれない。
「早く、李璃を助けたい……李璃に、逢いたい」
「……うん」
素直な感情の吐露を最後に、獅紋は口を閉ざした。
震える肩が、まだ温もりを必要としていたから……ぎゅうっと抱き締めたまま、静かに呼吸をする。
私にできることは何だろう。
私が獅紋にしてあげられることは何だろう。
正義感が強くて、紳士的で……ただ白蓬李璃に。
好きな女の子に会いたいだけの男子を、あと2週間で殺さなくてはいけない。
私はそのことから、目を逸らした。
「……もう、大丈夫だ」



