白の姫に差し伸べられた、光と闇の手



殺す為に近付いているから、獅紋からお礼の言葉は受け取れない。

それはずっと共通する思いだから、同じことを言ってしまったのだろう。


私が口を閉ざすと、獅紋も何も言わず、少しの間沈黙が落ちる。




「その……大丈夫?」


「……何のことだ? 大丈夫じゃないのは、黒塚の方だろう。倒れたし、怪我もしたし」


「私は、平気。体じゃなくて……獅紋の心。白蓬李璃のこと……」


「……」




踏み込んで聞くと、獅紋はしばらく黙り込む。

私に聞かれたくなかったのかな、と考えた時、獅紋はぽつりと言った。




「体に、力が入らない。偽物に惑わされて……李璃を探すのを止めていたことも。偽物だって、気付けなかったことも情けなくて……」


「……騙されるのは、仕方ない。そういう魔法を使われていたから」