眠気を覚ます為に、自分で刺した二の腕の傷が一番深いくらいだ。

左腕の調子は万全とは言えないけど、体全体は特に問題無い。


1日休んで学校に来た私と教室で話をすると、胡桃(くるみ)は頬に手を添えて溜息を吐いた。




來樺院(らいかいん)さんは魔法で正気を奪われていたそうですね。それにしても、一時は入月さんが白蓬様だと信じていたでしょうから……心の傷は大きいはずです」




正気を奪われていたわけではないのだけど、細かいことはいいか、と口を噤む。

代わりに獅紋(しもん)の心情について、私も考えた。


蠱惑の毒魔法もあって、獅紋が白蓬李璃と再会できたと信じ込んでいたのは確かだ。

それが偽りだったと知ったら……複雑な心境だろう。




「そう、だね」