白の姫に差し伸べられた、光と闇の手

Side:翠笑(すいしょう)


氷霞(ひょうか)ちゃんをお姫様抱っこして向かった先は保健室、ではなく、校舎裏から離れたどこぞの物陰。

今は保健室まで運ぶ時間すら惜しい。



獅紋を追って、校舎裏が見える窓に来てからの記憶は無く……。

バシャッと体に水がかかって、気がついたら、氷霞ちゃんが倒れるところだった。


サポート役として不甲斐ないのはもちろん、氷霞ちゃんを失うかもしれないことに、心臓が凍るような思いをして。


魔力が枯渇しただけだと分かって少しホッとしたけど、獅紋が氷霞ちゃんの舌を見てしまったことに、また肝が冷えた。




「氷霞ちゃん、聞こえる? 今、魔力をあげるね」




一度、氷霞ちゃんを地面に下ろして、上半身だけ抱き起こす。

少し躊躇ってから、反応のない氷霞ちゃんに……口づけをした。