「獅紋くん……怖いよ……」
翠笑の状態を確認しに行きたいのに、目の前には仇敵を見るような目で私を睨む獅紋と、その背中に縋る蠱惑がいる。
タイミングから考えれば、蠱惑が獅紋を呼んだようにしか思えないけど……そんな魔法が、果たしてあるか。
「答えろ、黒塚」
「……獅紋。その人は、あなたの婚約者じゃない。港泰が言ってた。入月織江が白蓬李璃である可能性は無いって」
「李璃じゃない、だと? 当たり前だ。彼女は李璃とは別人なんだから。俺が言ったことを忘れたようだな。この学園に、李璃はいない」
一瞬、分かってくれたのかとぬか喜びした。
獅紋は蠱惑を白蓬李璃だと断定した上で、彼女に言われた通り、別人として扱っているだけだ。
この状況で、どう言えば獅紋は引いてくれるのか……。



