顔、そして体の周りで常に空気を動かしていれば、毒魔法は効かない。
「無駄。毒属性の知識は、私にもある」
「あら、そうなの。でも、知ってるだけじゃどうにもできないわよ? だって彼は、もうあたしの魔法にかかってるもの」
蠱惑は唇に人差し指を当てて、妖艶に笑う。
眉を顰めてその言葉の意味を考えながら、私は彼女に炎の矢を放った。
先程あちらがしてくれたように、1つの隠蔽魔法に隠し、風の刃を蠱惑の背後から生み出して。
「ふふっ、あたしに攻撃なんてしていいのかしら?」
「何を……」
「そこで何をしている!」
「っ!」
聞き覚えのある声が頭上から降ってきて、弾かれたように顔を上げる。
そこには、2階の窓から険しい顔でこちらを見下ろしている獅紋がいて。
どうして、と一瞬固まると、蠱惑が「きゃあっ!」と悲鳴を上げた。



