「あなたとっても精神力が強いのね。大抵の人間ならころっと寝ちゃうんだけど」


「っ……こんな、程度……!」




敵を前にして、呑気に寝られるわけがない。


入月(いりづき)織江(おりえ)になりすましている殺し屋が、入月織江と全く同じ属性の魔法を使うとは、私も思っていなかった。

水、風以外の、何かしらの属性も使えるだろうと。


まさかそれが、毒属性だったなんて。



私は猛烈な眠気を覚ます為に、袖口に隠した暗器で、左の二の腕を刺した。




「うっ……」


「ちょっと、正気!?」


「……次は、食らわない」




痛みで眠気がマシになったので、暗器を抜いて血を払う。

傷口は火魔法で焼いて、ひとまず塞いでおいた。