「えっと、ごめんなさい。白蓬李璃さん、がどなたかは分かりませんけど……これでいいですか?」
メガネを外して真っ直ぐに私を見る彼女の瞳は、琥珀色のまま。
目の色を変えないのは予想通りなので、私はポケットからスマートフォンを取り出した。
「不思議。眼鏡の魔法具なのに、目の色変わらないんだ。不良品なんじゃない?」
「っ……! その写真、は……!」
「昨日だったかな。植物園にいたら、誰かの話し声が聞こえてきて」
あの時、念の為にと1枚撮っておいた写真を見せる。
眼鏡を外し、黒髪青目になった入月織江と、柔らかい表情の獅紋が写っているものだ。
入月織江は動揺した後、観念したように笑った。
「やだ、人がいないかちゃんと確認したつもりだったのに……普段は魔法具だけじゃなくて、自分でも魔法を使ってるんです。眼鏡を外す機会も多いですから。ほら」



