胡桃の前であまり怪しい行動もできないけど、私達が出て行ったら、白蓬李璃だと知られたくない入月織江はまた逃げてしまうだろう。
せっかくの密会、ここは彼女を泳がせて情報収集をしたい。
とは言え、言葉が聞き取れない以上、2人の会話を盗み聞くのは翠笑に任せるしかないのだけど。
「……もしかして、瑠璃さまは……來樺院さんをお慕いしていらっしゃるのですか?」
「え……?」
しばらく、何か話している2人の声を聞き、眉を顰めながら鏡を見つめていると、胡桃がヒソ、と話し掛けてきた。
どこをどう解釈したのかは謎だ。
私は驚いて目を瞬いたものの、少し考えてから頷いて答える。
「うん。好き」
「まあ……いえ。お友達ですもの。わたしは応援致します」
胡桃は一度眉を下げ、しかしキリッとした顔でぐっと拳を握った。



