それが獅紋と入月織江だと分かると、私は胡桃の手を引いて背の高い植物の後ろに隠れた。
私達は植物園の奥の方にいたから、向こうは気付いていないようだ。
今は翠笑が獅紋についているはずだから、彼も近くにいると思うけど……姿は見えない。
「――、―――」
「――――」
「……」
やがて、話し始めた2人の声が微かに聞こえてきたものの、植物園が広いのが仇になって、その内容までは上手く聞き取れなかった。
こういう時、遠くからでも音を拾える、翠笑の音魔法の良さが身に染みる。
仕方なく、私は拾ったばかりの手鏡を植物の間から覗かせて、2人の様子を見た。
「あ、あの……瑠璃さま……?」
「しっ。大人しくしてて」
小声で話し掛けてきた胡桃に、口の前で人差し指を立てながら返す。



