……いや、考えすぎか。
もう少し早く来ていれば、獅紋がどうして白蓬李璃に気付いたのかも分かったのに。
後悔しながら怪しまれないように、そして獅紋を引き留める為に、適当な話を振る。
「ねぇ、獅紋。ここに毒属性の教本があるって聞いたんだけど、本当?」
「毒属性? いや、いくらここでも無いだろう。あれは医者しか学ぶことが許されていない属性なんだから」
「……噂は噂か。残念」
小耳に挟んで気になっていたことなので、本気で落胆した。
私が本棚に向かうと、白蓬李璃は入れ替わるように、ひっそりと第2図書室を出て行く。
横目に見たその後ろ姿は何故か既視感があって、私は、あれ、と首を傾げた。
どこかで会ったことがあっただろうか。