まさか助けを必要としているはずの白蓬李璃本人が、捜索の手から逃れているなんて誰も想定しなかっただろう。
同じ学園にいながら、今まで獅紋にすら正体を告げなかったのだから、その徹底っぷりが伺える。
獅紋はあれだけ必死に白蓬李璃を捜していたのだから、彼にだけでも教えてあげればよかったのに。
そう思うのは、肩入れし過ぎだろうか。
あちらの事情も分かったので、私は溜息を吐いて第2図書室の扉をガラガラと開けた。
「っ! ……黒、塚?」
「あれ……獅紋も来てたんだ。ここには人が来ないって聞いたんだけど」
扉を開ける音に反応して振り返った獅紋は、私を見て目を瞬いた。
表情筋は使えないので、首を傾げて私も予想外だったことを演出すると、獅紋の後ろにいる女子を見る。



