2人の声が途切れて、廊下の静けさが私にまとわりつく。
中の様子を見れないことが、少しもどかしかった。
しかし、沈黙は短く、女子の声からまた会話が始まる。
「ありがとう、獅紋くん……。ごめんね。私、今の両親に助けてもらった時、別人として生きることを選んだの……」
「そう、だったんだな……大丈夫。俺は李璃の選択を、尊重するよ。別人になっても、李璃の味方でいる。今度こそ、絶対に守るから」
「獅紋、くん……ありがとう。本当に、ごめんね……。私が……白蓬李璃が生きてることは、誰にも言わないで……」
「……分かった。李璃が望むなら、公にはしない」
白蓬李璃が別人として生きることを望んでいる。
それは考えていなかった可能性だ。



