白の姫に差し伸べられた、光と闇の手



ここは2人の会話を盗み聞いて、場が落ち着いた頃に獅紋と合流しよう。


そう決めて、私は扉の前から扉の脇に移動した。




「李璃……今まで、見つけてあげられなくてごめん。助けてあげられなくて、ごめん」


「そんな……謝らないで。隠れていたのは、私だから……」


「……ずっと、この学園にいたのか? 俺に話してくれなかったのは、どうして?」




獅紋の声はいつもより感情的で、けれどどこか優しい。

今までと比べると別人のようだけど、あれこそ本来の獅紋なのだろう。


白蓬李璃……女子の方は、弱々しい声で続けた。




「私……あの時、本当に怖くて……あそこから逃げられたのも、奇跡みたいなものなの」


「あそこ?」


「……あの日、私は誘拐されたの。お母様達を殺した犯人に。そこで、しばらく…………だから、私、白蓬李璃でいるのが怖くなって……」


「李璃……」