翠笑が私の前で初めて泣いたあの日から、私は彼への認識を改めて、冷たい態度を取るのをやめた。
「氷霞ちゃん、何か凄く優しくなったね。素はこんなふわふわしてるのに……むしろ、何であんな冷たい態度取ってたの?」
「殺し屋、だから。人として生きちゃいけないと思って……」
「え。そんな理由? 何て言うか……真面目だね」
翠笑は楽天家で、任務が無い時は自分が殺し屋であることをあまり意識していない。
「氷霞ちゃん、見て見て! 3、2、1、はい!」
「わぁ……!」
「やっぱり手品を見る時の氷霞ちゃんは可愛いね。他にも練習してきたんだよ」
私は、翠笑に色んなことを赦してもらった。
翠笑は優しくて、私を甘やかしてくれるから、つい甘えてしまって……。
今思えば、本当に腑抜けていた。