Side:氷霞(ひょうか)


私は最初、翠笑(すいしょう)が人の気持ちの分からない狂人だと思っていた。

貼り付いたような笑顔は嘘くさいし、笑いながら人を殺すし、変なところを褒めるし。


それが誤解だと気付いたのは、合同任務を終えた後に翠笑がポロッと涙をこぼしたからだ。




「こんな話、情けないかもしれないけど……僕、人を殺すの、怖いんだ。ボスの役に立ちたいから頑張ってるんだけど、何か、急に涙腺壊れちゃったみたい」




どうしたのかと聞くと、翠笑は笑いながらそう言った。




「……無理、しなくて、いいと思う。その……泣きたいなら、笑わなくても……」


「アハハ、ありがとう。でも顔はこれ、癖なんだ。いつも笑ってろって躾られたから」


「そう、なんだ……あの、その。私も、人を殺すの、怖いから……情けなく、ないよ。涙が出るの、おかしくないから……」