「おねがい、おねえちゃん……おかね……とってぇ……!」
「わ、分かったから、泣かないで。獅紋、あの、この子、お願い」
「あぁ」
私の服を掴む女の子の手をそっと離して、獅紋に押し付ける。
泣いてる子供の慰め方なんて分からない。
早くお金を取って泣き止んでもらおう、と私は自動販売機に近付いて、その下を覗き込んだ。
女の子の物と思しき硬貨はすぐに見つかったので、風魔法を使って掻き出す。
「はい。これでいい?」
「わたしのおかね……! おねえちゃん、ありがとう!」
「どう、いたしまして。次は、気をつけてね」
「うん!」
しゃがんで硬貨を渡すと、女の子は眩しい笑顔を私に向けて、走って行った。



