彼は休日によく出掛けている、と翠笑から聞いたので、今日は來樺院獅紋に同行することにした。
恋仲になる、という目的に於いても、他の殺し屋から來樺院獅紋を守る、という目的に於いても、休日の時間は見逃せないからだ。
「じゃあ、一緒に行っていい? 1人で歩いてると迷いそう」
來樺院獅紋は視線を上げて私を見ると、「そうか」と呟いた。
「ここら辺は初めてだったな。……俺に着いて来ても面白いことは無いぞ。門限までかかる」
「構わない。飽きたら帰る」
「……」
口を閉ざした來樺院獅紋を見て、あの日のことを気にしているのだろうな、と悟った。
私が好意を告げてから、來樺院獅紋は私に一定の距離を置くようになった。
意識されているのは喜ばしいけど、今は断られたくない。
私は降参、と言うように、両手を顔の高さに上げた。