白の姫に差し伸べられた、光と闇の手

Side:來樺院(らいかいん)獅紋(しもん)


黒塚を見送った後、途中でまた倒れたら、と頭に過ぎって、すぐに黒塚の後を追った。


度々李璃が重なって見えるせいか、どうも黒塚の存在が気になってしまう。

あの冷たさを感じる無表情と暗い瞳は、純真無垢な李璃とは似ても似つかないはずなのに。




「――少し神経質になってるだけ。平気」




曲がり角の先から黒塚の声が聞こえて、足を速める。

曲がった廊下の先には、奥に向かって歩いていく黒塚と、すれ違ったその姿を追うように振り返る夜唄がいた。


それだけならいいのだが、夜唄は前を歩く黒塚を突然抱き締めて。

俺はすぐに来た道を引き返して、壁に隠れた。


まさか、夜唄が黒塚にあんなことをするなんて。


少し考えてから、俺は何も見なかったことにして、中庭に戻った。